茶の湯その周辺

忘露庵          記:木村全伸


紙の席『忘露庵』 

こちらの紙の席『忘露庵』は去る平成二十三年九月十一日に京都山科の大石神社、岩屋寺、山科神社におきまして開催されました西野山大茶会におきまして使用された茶室です。茶会の趣旨である、本来ならば用がなくなり捨ててしまうもの、見向きもされないもの、そのようなもの少し視点を変えてみてると、別の価値あるものに生まれ変わるのでは?そのような思いでこの茶室製作は始まりました。茶室の大部分を占める壁の材料は、普段ものを運んだり整理したりするとき使用している段ボールに着目しました。段ボールを接着剤で接着し積層状態にしたものを機械でせん断し、その厚み三センチの積層材を茶室の壁に使用しました。その壁は自然光、気流を通過させますが、見る角度によって向こう側が見えたり見えなかったりと、この絶妙な透明感を持つ素材で茶室に非日常的空間が作り出されます。またその材料は、無料で安易に手に入れることができます。(主に、ホームセンター、ドラックストアなど処分されるものをもらってきました)


本席は二畳小間(炉の季節には隅炉手前も可能)の茶室です。二畳敷の茶室で有名なのは大山崎にあります国宝待庵ですが紙の茶室においても待庵のいくつかの部分を引用させていただきました。にじり口は待庵と同じ寸法で、一般の茶室よりも少し大きめですが、現代人の体の大きさにはちょうど良いのではと思い引用しました。腰張りは少しでも光が透過するようにと、一般の湊紙でなく和紙に水彩絵の具染めとしました。こちらのほうが湊紙よりも鮮やかな発色が得られ室内が明るい感じになったと思われます。床柱は青竹とし、茶会の度に、新しいものにしつらえます。壁材に段ボールを使用しながらも、入口をにじり口、茶道口に太鼓襖、畳を本畳とし、茶室としての在り方をなるべく壊さないように心がけました。



西野山大茶会当日、南宗寺の老師さまよりこの紙の席に「忘露庵」という名前を頂戴し、即興で扁額(廃材となるはずであった破材に)をかいていただきました。ありがたく茶室正面にかけさせていただきました。 紙の茶室「忘露庵」は、多くの方々に各々の仕事の休日の時間を茶室製作のために使っていただき、当初、無謀とも思われたこの茶室制作を最後まで完成させることができました。今回「こだはら大茶会」におきましても、新たに多くの方に披露させていただく機会をいただき心より感謝申し上げます。

卜深庵 社中 木村全伸



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