月次歌会を終えて春日大社職員の稽古。床は有隣斎筆になる在原業平の和歌を掛け、段菊と甘野老(あまどころ)を竹一重切花入に入れました。
から衣きつゝなれにし
つましあれは
はるゝゝきぬるたひをしそ
おもふ
守書
何度も着て身になじんだ唐衣のように、長年慣れ親しんだ都にいる妻を残したまま、はるばる来てしまった旅をしみじみと思うことです。
『伊勢物語』第九段(『古今和歌集』)の歌です。業平が三河国の八橋に差し掛かった時、杜若が美しく咲いているのを見て都に残した妻を思い詠んだ歌でいます。
着物が「慣れる」と馴れ親しむの「なれる」、「妻」と着物の 「褄(つま)」、着物を「張る」と「遥々」の掛詞、、各句の頭文字を取ると「かきつはた」になる折句、「着」にかかる枕詞「唐衣」、「なれ」を導く「唐衣着つつ」の序詞、「唐衣」の縁語である「なれ」「つま」「はる「き」などの技法が巧みに用いられています。
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