今年は1月6日「小寒」、そして二十四節気の24番目である「大寒」が20日です。
小寒から立春までの30日間を寒の内といい、大寒はそのそのまん中にあたり一年で最も寒冷の厳しいころとされています。むかしから寒の内に汲んだ水は雑菌が少なく体にも良く腐らないといわれていました。そこで長期保存に向いていて寒の水で作られた味噌、醤油、酒は腐らないとされ、これらを仕込む時期とされてきました。いわゆる「寒仕込み」です。江戸時代に著された『暦便覧』には次のように大寒のことが記されています。
冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也
一年中で最も寒い時期である30日間、僧が明け方に山野に出て声高く念仏を唱え、のちには在家のものも寒夜に鉦をたたいて念仏を唱えながら市中を練り歩き報謝を請いました。これを「寒念仏」といいました。また鈴を振りながら裸足で薄着して社寺に参詣し祈願する「寒参」や、冷水を浴びて神仏に祈願する「寒垢離(かんごり)」などの寒中の修行を特に「寒行」といいます。厳しい苦行を積むことにより、多くの功徳をもたらすという信仰から生まれたものだそうです。
昼間、近所の聖護院の山伏が町内を法螺貝を吹きながら寒行をしていました。法螺貝の音が徐々に近づいてくるのを聞いて、「松の内」であるけれど今がまさに寒中なのだと気づきました。年賀状には「初春のお慶び云々」と書きます。また茶の湯の世界では家元はじめ多くの茶家で新春を寿ぐ「初釜」が催されている最中です。でも実は春どころではなく、今が冬の真っ盛りです。改めて新旧の暦、実際の季節のずれを実感しました。
写真は大津絵「鬼の寒念仏」です。大津絵は大津(滋賀県大津市)で江戸時代に名産とされた民俗絵画で、東海道を旅する旅人たちの間の土産物として売られていました。大津絵は名もない市井の絵師が画いた絵です。この「鬼の寒念仏」は、慈悲ある姿とは裏腹な偽善者を衣をまとった鬼を通して諷刺したものだそうです。鬼は人の心の内にあるということで、描かれた鬼の角は、仏教で克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩、すなわち貪・瞋・癡(とん・じん・ち、貧欲・瞋恚・愚痴)を表わしています。
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