江戸時代後期の公家芝山持豊(もちとよ)の短冊「夏月」です。
夏月
寝て明かす人やなからん夏の夜は
涼しき月の影に浮かれて
夏の夜を寝て明かす人なんかいないでしょう。涼しい月の光に心も浮かれるから。
通常、和歌では単に「月」という題は秋の月のことです。他の季節の月は「夏月」とか「春月」とか「冬月」と必ず季節をつけると決められています。そして秋の月は「澄む月」、春の月は「霞む月」、夏の月は「涼しい月」、冬の月は「凍る月」を詠むのが習いとなっています。この歌は、昼間のうだる様な暑さも夜には少しおさまり、さらに月の涼しい光がより一層涼しい気持ちにしてくれます。その月のおかげで心が浮かれて寝ることすら忘れてしまうという心境を詠んだ和歌です。
浴衣や甚平を羽織り、またステテコにシャツといったラフな姿の男性。女性はアッババ姿。花火で遊ぶ子どもたち。縁台に蚊取線香を出して、団扇を片手にビールを飲んだりや縁台将棋、子どもたちの花火を眺めてを楽しむ大人たち。子どもの頃のごく当たり前の光景でした。とても懐かしいです。
温暖化の影響か、近年は夜も昼間と変わらぬ熱帯夜です。エアコンのおかげでかえって戸外の方が蒸し暑いです。そのエアコンの室外機が戸外をますます暑くする。まことに皮肉なことです。
エアコンの恩恵を受けている多くの現代人には、むかしの人の涼しい月を見て心が浮かれて眠れないという心境は到底理解できないことです。
ところが夜中まで営業しているコンビニや、公園の街灯のもとには、昔も今も若者がたむろしている光景をしばしば目にします。まさに夜の灯りを求めて集まる虫のように。夏は衣類も薄着になり開放感が増すからでしょうか?学校が夏休みになり翌日のことを気にしなくていいから?それとも涼しい月の光に浮かれて?
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