出雲の櫻井家住宅で、藩主が使う「上の間」の延長線上で次の間に接するところに三畳の茶所とされる小部屋があります。釣床様の壁床、勝手に近い方に方立の太鼓襖が入り、次の間との境には二枚の引き違いの唐紙の襖、濡縁には一枚の板戸が開戸として入っています。畳中央勝手寄りは台目切で炉。点前畳と思われる畳と炉畳の天井には瓢透の板が取り付けられ結界としているようです。同じく勝手に引き違いの障子の入った窓が開けられています。窓の外部には半蔀戸式ののね板の小さな板戸が取り付けられています。
藩主が上の間にいる時にここで茶を点てて出したのかもしれません。ただし水屋は一間置いて離れた位置にあり、どちらかというとここは簡易な茶席として用いられたのではないかと思います。そもそも茶点所に床は必要無く、建具を閉めると微かな窓からの明かりでとても落ち着いたわびた空間になります。もともとこの建物が建てられた時には茶室はなかったようで、この部屋に藩主を通して手前で茶を点てて差し上げた場ではないかと思いました。まことに簡易な作りですが、とてもわびた素晴らしい空間です。限られた空間を上手に活かしています。間違いなくここは茶室だったのではないかと実感しました。
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