江口は大阪市東淀川区にある地名で、淀川の河口部分にあたり、神崎の津とともに海上交通の要衝として古くからにぎわった所です。江口の遊女は室津の花漆と同じく、「遊女長者」と呼ばれるほどの地位にいました。
四天王寺に参詣する西行法師が、江口を通った時ににわか雨にあい仮の宿りを遊女に乞いますが拒まれました。
世の中をいとふまでこそかたからめ
仮のやどりをおしむ君かな
との西行の和歌に対し遊女は、
世をいとふ人としきけば仮のやどに
心とむなとおもふばかりぞ
と即座に返しました。
「世捨て人になるのは難しいかもしれないけれども、仮の宿ぐらい貸して下さい」と愚痴る西行に対して、「あなたは出家した方だからこのようなはかない営みをする宿にかかわってはいけません」と遊女は答えたのです
仮の宿とこの世をはかない仮の宿とする仏教的な意味が込められています。
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