茄子には小切茄子から 米茄子などのような丸い茄子・千両茄子・水茄子・長茄子(通称)などたくさんの種類があります。茄子は長ければ長いほど美味しいのだそうです。小さな茄子も50センチにもなる長茄子まで種の数はほとんど同じです。だから長くて大きなものほど種と肉の割合いが種のほうが少なくなっていて肉が多いので美味しいとのことです。茄子を選ぶ時はもちろん鮮度とか色も大切ですが、きるだけ長い物を選ぶほうがいいのです。広島の長茄子や長崎の長崎長という茄子は大きいものなら80センチにもなるものがあるとのことです。
さて賀茂茄子(加茂茄子)は京都市の北部、上賀茂神社のあるあたりでとれる伝統野菜です。直径が10センチ~15センチ、重さが300g~400gになるまん丸で濃紫色に鮮やかに輝くのずんぐりとした丸い茄子です。一見丸茄子との区別がつきませんが、賀茂茄子はガクのつけねがすこしへこみ3つに分かれています。栽培には非常に手間がかかるそうです。JA京都のホームページを見ると、現在、賀茂茄子の生産農家は28戸、栽培面積約150アール(すべて露地栽培)、平成18年度の出荷量は約110トンとのことです。なお大半が露地栽培されているので、出回る時期も限られています。京都での収穫時期は6月中旬頃から10月中旬頃となっています。
なお、ウイキペディアによると、現在の伏見区鳥羽芹川に賀茂なすの起源があるという仮説があるとのことです。芹川で盛んに栽培されていた事から、大芹川という別名が生まれました。貞享元年(1684)の文献では左京区吉田田中地区にあたる地域でも栽培されていたという記録があるそうです。1910年代以降に、北区上賀茂および西賀茂とその附近で栽培が始まり、2000年代にも上賀茂周辺では盛んに栽培され、京都市は同地域に特産そ菜保存圃を設置して農家に品種保存を委託しています。また、京田辺市や亀岡市、滋賀県などでも栽培が行われ、2004年の統計では販売数量に占める生産地ごとの割合は京都市が44%、亀岡市が20%、綾部市が9%となっているとのことです。
賀茂茄子は他の茄子にくらべ甘みがあり、肉質は緻密でよく締まり歯ごたえが違います。賀茂茄子の田楽は絶品です。
さて賀茂季鷹の賀茂茄子の画賛の軸を毎年稽古に使っています。季鷹はわたしの大好きな歌人のひとりで、和歌、狂歌双方に通じ、自在な技巧を用い、知的で明快な作風が特色です。この軸もまことに気のきいた楽しい作で、お気に入りの一軸です。
面白き節はなけれど望まれて
さん茄子とも賀茂の季鷹
茄子には面白い節(点・ところ)は無いけれど、賛を書くように(三茄子に掛けている)と望まれたわたし賀茂季鷹(賀茂茄子にかけている)。
なお、この軸からわかるようにウイキペディアの「1910年代以降に、北区上賀茂および西賀茂とその附近で栽培が始まり、2000年代にも上賀茂周辺では盛んに栽培され」の記述は明らかに誤りです。季鷹は天保12年(1841)に91才で没しています。少なくとも江戸時代末期に賀茂茄子は間違いなく「賀茂」で栽培されていました。
賀茂茄子、美味しい、絵も楽しいですね。
古くから都がある京都は人の往来が盛んで、各地から街道を通って優良な品種が次々と持ち込まれ、京都の地で野菜が選抜され、美味しく育種されて来ました。
今も栽培される京の伝統野菜です。
日本の誇れる種苗会社、創業1835年(天保6年)タキイ種苗が京都にあるのも偶然ではないと思います。