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執筆者の写真木津宗詮

おせち料理

年が改まり元旦に祝うおせち料理には、子孫繁栄や豊作、長寿など、様々な願いが込められた品があります。わが家の元旦は白味噌仕立てに輪切りの大根と人参・小芋、湯で柔らかくした丸餅のはいった雑煮。取肴が黒豆、ごまめ(田作り)、慈姑(くわい)、たたき牛蒡、数の子を皿に盛り合わせ、大根と人参の紅白なますが別の器に添えられたものを折敷に載せて家族で新年を祝います。3が日は重箱に詰められた妻のおせち料理と、例年大晦日の夜に料理方を務めてくれている仕出屋が届けてくれるおせち料理をいただきます。

おせち料理は正月に食べるお祝いの料理で、漢字では「御節料理」と書きます。朝廷の「節会(せちえ)」で供される供御(くご)を「節供(せちく)」といいました。「おせち」は「御節供」や「節会(せちえ)」が略され多言葉で、おせち料理は五節供の祝儀料理すべてをいいました。江戸時代に今日の正月料理を意味するようになったそうです。おせち料理は歳神さんに三方などにでめでたい食べ物を載せて床の間に供え、また年始の挨拶に訪れた客にも振舞ったり、家族も食べたりしました。重箱に御節料理を詰めるようになったのは明治時代以降とのことです。

おせち料理には味を濃くして煮炊きしたものや酢に漬けて日持ちする物が多いです。正月の3が日は歳神さんを迎えて共に食事をする雑煮以外は煮炊きをできるだけ避けるためです。おせち料理の品にはめでたいものにかけたものが作られます。「黒豆」は黒く日焼けするほどマメに働けるように、「数の子」は子孫繁栄、「ごまめ(田作り)」は「五万米」で五穀豊穣、「たたき牛蒡」は牛蒡が地中深くまで細長く根を張ることから家や家業がその土地に根付いて安定するように、海老はひげが長く腰が曲がっていることから長寿や脱皮を繰り返していくことから出世、「搗栗(かちぐり」)は「勝ち」に通じ、「長老木(ちょろぎ)」は「千代呂木」とか「長老喜」と書いて長寿、「昆布巻き」は喜ぶ、「慈姑(くわい)」は最初に大きな芽が一本出ることから出世、「金柑(きんかん)」は「金冠」で財宝、ナマコは形が俵に似ている事から豊作 を意味するなどです。このようにおせち料理はひとつひとつに意味が込められて新しい年を祝うために食べる料理なのです。そして古くは膾、黒豆、ごまめ、慈姑、たたき牛蒡、数の子、煮しめなどでしたが、時代とともに食材も増えさまざまな料理が加えられて今日にいたっています。近年は中華風や洋食風のおせちも作られています。

おせち料理を暮に作って3が日それを食べるのは、歳神さんを迎えた新年に台所を騒がせないとか、火の神である荒神を怒らせないためとの説があります。そして毎日食事を作る女性に正月3が日だけ家事から解放するためとの説もあります。昔は正月3が日はほとんどの店が休みだったので食料品が手に入らないのと、台所を休ませる意味合いもあったのだと思います。ただし、主婦が3が日休むために暮におせち料理を作るのは大変な労力です。今はコンビニもあるし、元旦から開いてるスーパーや飲食店もありおせち料理の意味がなくなってきたようにもみえます。無理に正月におせち料理を食べなくても普通に食べたいものを食べることができるようになりました。そういう意味ではまことにありがたいことです。また独身の人たちにとってはコンビニがおせち屋みたいなものになっているようです。今から考えるとキャンディーズの「おせちもいいけどカレーもね!」がこうした流れの萌芽だったのでは。逆に通販やコンビニで売っているおせち料理は本来の「おせち料理」への回帰なのかもしれません。いずれにしろ世の中が便利になり、そして豊かになったことは本当によいことだと思います。それに対して伝統的なものが薄れていくのはとても残念なことでもあります。


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