今回の稽古では、杉木普斎の作になる竹茶杓「ほとゝきす(保登ゝ幾須)」を用いています。箱には「有麦隠士(花押)」と認められています。
ホトトギス・時鳥は夏の鳥で、古来、旧暦4月立夏にやってくる鳥とされていました。そのけたたましい鳴声は、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」とか、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえ、ホトトギスの名前の由来もこの鳴声によるという説があります。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られています。
ホトトギスの異名の杜宇や不如帰・蜀魂・田鵑は、中国の古典によります。古代蜀の国王杜宇(とう)は、宰相の謀反によって逃亡し,復位を計るも果たせず,魂がホトトギスになりました。旧3月になると農民に種蒔きの時期を鳴いて知らせたとあります。また今も「不如帰(帰るにしかず)」と鳴いている、ということからホトトギスの別名になったとされています。
和歌でも「死出の田長(しでのたおさ)」と読みます。日本では田植えのころにあの世からやってきて、かん高い声で鳴き、あたかも田植えをしているお百姓にあたかも「働け!働け!怠けるな!」と督励しているように鳴いていることによります。これも蜀の杜宇の話しを元にしていると思われます。
田植えは近年、ゴールデンウイークに多く行われている様です。これは兼業農家が増え、兼業している仕事の休みの日に行うからです。そして品種改良により良い早稲米を植えて台風がやってくる前に収穫することも関係しています。
私の子どものころは田植えというと梅雨時にたくさんの人により行われていました。昨今は性能の良い田植え機もでき、かつての様に多くの人手がなくても1人できる様になりました。
わたしにとって田植えといえば雨の中、家族総出で行われるというイメージです。子どものころに田舎に行った時、ホトトギスが甲高く鳴く中、田植えが行われていたそんな光景を思い浮かべました。そうしたことからこの茶杓を使いました。
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