top of page
執筆者の写真木津宗詮

創業194年

私は豆腐や油揚げ・厚揚げ・飛龍頭が大好きで、見知らぬ豆腐屋を見つけるとついつい買ってしまいます。

今日もたまたま油小路椹木町で入山豆腐店という店を見つけました。昔ながらに竃で大豆を炊いて豆腐を作っている店です。ご主人にいろいろと豆腐作りについて話を伺いました。創業文政12年、なんと今から194年前です。当代で8代目、最古の豆腐屋の一つだと思います。明治42年の生産品博覧会で銀賞を受賞した焼豆腐の賞状と翌年に同じく銀賞を受賞した飛龍頭の賞状が掲げられ、また大きな釜が掛けられた竃、そして煤がかかった柱などにその歴史を感じさせてくれます。

入山豆腐店では、豆腐を作るにあたりまず大豆を一晩水につけてふやかします。6升枡分の大豆が倍近くに膨れるそうです。グラインダーで水とまぜあわせながらすりつぶし、どろどろになった大豆を竃さんで沸かした湯の中へ入れて炊きます。炊きあがると目の粗い袋にひれて漉し、続いて目の細かい袋を通してしぼって豆乳を作ります。次に大きい桶で豆乳とにがりをまぜて布巾を敷いた型箱に移し、重しをして余分な水分を抜いて水に放して包丁で切って完成だそうです。できあがった豆腐の一部は油揚げや、飛龍頭、焼豆腐などに加工されます。焼豆腐は布巾で水切りして備長炭で焼目をつけます。油揚げは油を入れた鍋を竃を掛け、そこに豆腐を入れて作ります。豆腐を鍋に入れた直後は一度温度が下がり、そこに薪を足して温度を上げながら揚げてふっくらと仕上げます。一般的な豆腐屋では2つの鍋を使って、低温と高温で二度揚げしてふくらせたり、色をつけたりしているそうです。飛龍頭は一晩しっかり水切りをした豆腐に、ごぼうやにんじん、すった長芋をつなぎに加えて形を作って揚げます。乾燥芋でなく生の長芋を毎回するので香ばしい飛龍頭になるそうです。

近年、柔らかくて甘い豆腐が人気のようです。私は豆腐は箸で挟める豆腐が一番で、箸を挿して食べるのはとても品のない食べ方だと思います。また、必要以上に甘いのも如何なものかと思います。冷奴や湯豆腐、味噌田楽のようにそのまま調味料をかけて食べるとか、汁物や鍋料理の具材、料理のベースになる食材ということで、あくまで豆腐は淡白なものとの思いがあります。ただし、これはあくまで私の主観ですが。

なお、今流行りの甘い豆腐は煮豆に使う大豆で作っているそうです。豆腐と煮豆ではもともと異なる大豆を用いていたそうです。煮豆用の大豆は糖分が多くにがりでうまく固めることができないのが、近年それを固める機会が開発されたことにより作ることができるようになったそうです。今までなかった豆腐であったことと、消費者の嗜好に上手く乗ったことが普及した要因とのことです。

現在、京都で竃を使って豆腐を作っているのこの店だけだそうです。全国でも10軒程度しかないとのことです。昔ながらの製法で作っている店もほとんどなくなっています。昔は町内に一軒の感覚でお豆腐屋があったのが。今では年間10件ほどずつ廃業しているそうです。入山豆腐店にも後継者がいないのでこの豆腐も当代で絶えてしまうすです。当然、公からの支援などありません。伝統文化の枠組みとはなんなのかと疑問を持ちます。和食が世界遺産に認定されてもその根幹である素材がなければ成り立ちません。代わりのもので代用するにしてもそれは本来のものではなく異なる新たなものなのです。変わることは否定しませんが。

伝統を伝えることの困難さを改めて実感しました。


閲覧数:36回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page