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執筆者の写真木津宗詮

吸江斎好 力圍希(りきいき)棗

 力圍希棗は利休250年忌に表千家10代吸江斎が好んだ茶器です。作者は7代駒沢利斎(春斎)です。力圍希棗のうちの大棗「力」です。箱書の蓋裏に「已亥 不審菴 吸江」、その甲に「大棗」、箱には、「以龍宝山五老松造 利休居士好之茶器 大中小三品分筆 居士辞世中之文字 力圍希為居士二百 五十年忌之追慕」と記しています。已亥は天保10年(1838 )の干支で、以心斎の「松木盆」同様、大燈国師の手植えになる五老松の古材を用いて作られています。箱書から利休好みの大・中・小の棗に利休の辞世中の「力圍希」の文字を分筆し、二百五十年忌の追慕の品とした旨がわかります。 なお、7代駒沢利斎は駒沢家の中興の祖と呼ばれ、表千家8代啐啄斎、9代了々斎、 10代吸江斎の3 代にわたり出仕しました。6代利斎の実子が若くして亡くなったので、6代の婿婿として駒沢家に入った人です。特に了々斎に重用され、駒澤家の内玄関に掛かる「御茶器 さしもの師 駒澤利斎」の暖簾は了々斎の筆によるものです。

 7代は指物だけではなく「春斎」と号して塗物も手掛け、8代黒田正玄や11代飛来一閑らと合作をするなど他の分野でも意欲的に製作を行っています。了々斎から「曲尺亭」、吸江斎から「少斎」の号を授かっています。








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