睨み鯛とは塩焼きにした尾かしらつきの鯛を正月3が日箸をつけずに「睨んで」4日目に食べるという風習をいいます。鯛は「目出度い」という語呂から、古来、めでたいものの代表とされてきました。正月にやってくる歳神(としがみ)への神饌(神への供物)として鯛が三が日供えられ、4日にそのおさがりを有難く頂くということです。
睨み鯛は京都や大阪など西日本の風習だそうで、東京は関西の出身の人が多くいるので睨み鯛をする家庭もあるとのことです。なお、関東から北では正月に鯛を食べる習慣がない地域があるとのことです。魚の生息分布上鯛が手に入らない地域では食べることができないからだそうです。
生魚を3日間も歳神に神饌として供えると腐ってしまいます。そこで塩焼きした鯛が供えます。昔は冷蔵がなかったので保存方法は塩で保存するか、調理して保存するのが一般的で、塩焼きは最も一般的な方法で正月の魚の保存法でもありました。なお、鯛の塩焼きをするときには「化粧塩」といっ尾と頭に塩をたくさんつけて焼くと頭と尾が焦げにくいそうです。皿に盛りつける際には頭が左にくるように置くのが作法です。また祝いごとでは魚には包丁は入れないという習わしがあり、「つぼ抜き」といって箸を魚の口から入れて、2本で腹わたをつかんでひねりながら引っ張り出すのだそうです。
絵所預土佐光貞画「鯛図」です。賛は大徳寺390世真巌宗乗で「福寿海無量」と認められています。福寿海無量とは『観音経』の中では「福聚海無量」となっていて、観世音菩薩の功徳は「福を聚(あつ)めた大きな海のように量に限りが無い」という意味でです。「 聚」を同音で縁起の良いことばである「寿」に置き換えて用いられています。光貞の鯛はまさに水面から跳ね上がる勢いのある姿を描いています。
睨み鯛は年神さんの有難いおさがりですが、塩焼きしてせでに3日以上もたった鯛です。正直、決して美味しいものではありません。我が家では祝儀のものとして睨み鯛の行事を行なっています。
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